Vol.8
サウナで尿酸値は“ととのう”のか
院長 日高 雄二 先生
日本独自のサウナ文化1,2)
日本では1960年代に第1次サウナブームがあり、2010年代から始まった第2次サウナブームが今につづいています。サウナというと、「サウナ室」で汗をかき、冷却器で冷やされた「水風呂」に浸かり、椅子などで休憩する(「外気浴」)サイクルを数回繰り返すやり方が人気のようです。そのサイクルを繰り返すと「ととのう」という、気持ちが良くて、リラックスした状態がおとずれると言われています。そこで高尿酸血症・痛風の持病があり、サウナに興味のある方や、すでにサウナー(サウナ愛好家)の方にとって気になるのが尿酸値への影響です。
サウナで汗を流せば、尿酸値も下がる?3,4)
尿酸の約70%は腎臓を経て尿から排泄され、残りは、便や汗から排泄されます※。したがって、サウナで汗を流した場合、尿酸もある程度は排泄されますが、では、尿酸値に変化はあるのでしょうか。
ある報告では、健康な大人が5分間サウナ室に入り15分間休憩するサイクルを2回繰り返した後の体の変化を調査しています。その結果、発汗のため体重が1 kg減少し、血清尿酸値が0.3mg/dL程度増加、尿の量が約半分になり、尿として排泄される尿酸も30%程度減少したとのことです。これらの変化は脱水の影響によるものと考えられ、血中尿酸値はあまり上昇していないことから、サウナの尿酸値への影響は少ないと考察されています。
※ 詳細はこちら ▶ なぜ高尿酸血症になるの?
サウナで“ととのった”後にビールなどのアルコール飲料を飲む方も多いのではないでしょうか。この報告では、サウナ後のビール摂取についても調査を行っています。その結果、体重あたり10mL/kg(体重70kgで700mL:350mLの缶ビール2本相当)を飲むと、血中尿酸値が1mg/dL程度増加することが明らかになっています。サウナ後のビール摂取は運動後のそれと同じように血中尿酸値を増加させ、痛風発作のリスクを高める可能性があります。
サウナに入る場合は、必ず水分の補給を十分に行い、1日の総尿量が2 L以上になるように水分を摂るようにしましょう。尿酸を排出する目的でサウナに入ることはおすすめしません。もちろん、サウナ後にビールを飲むときには、十分に気をつけましょう。こちらの記事もぜひご参考ください。
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▶ Vol.5 気になるビールのプリン体量
(気になるコラム)
参考文献
1) タナカカツキ:サ道 ととのいの果てに PARCO出版:021, 048-053, 064-065, 2022
2) こばやしあやな:クリエイティブサウナの国ニッポン 学芸出版社:13-22, 114, 2021
3) 日高雄二 : 患者のための最新医学 痛風・高尿酸血症 改訂版 高橋書店 : 180, 2020
4) 山本徹也 Medical Practice 21 (8) 1385, 2004