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Vol.5
気になるビールのプリン体量

【監修】医療法人社団泰山会赤坂中央クリニック
院長 日高 雄二 先生
食品に含まれるプリン体は、消化・吸収というプロセスを経て体内に取り込まれますが、アルコールは体内に入るとすぐに吸収されるので尿酸値の上昇につながりやすいという特徴があります。お酒を飲み過ぎた翌日に痛風が起きやすいのはそのためです。アルコールのなかでも特にプリン体を多く含むのがビールです。今回は、ビールや発泡酒のプリン体量についてみていきましょう1)

ビールや発泡酒、地ビールのプリン体量に差があるのはなぜ?1,2,3)

アルコールのなかでも特にプリン体を多く含むのがビールです。ビールは、大麦を原料としているため、その麦芽の中の核酸が分解してできたプリン体が多く含まれます。A社、E社、K社、O社、SA社(調査時)などのビールや発泡酒などに含まれるプリン体量をまとめた2)があります。プリン体量に差があるのは、麦芽の使用量の違いと考えてよいでしょう。
ちなみに地ビールは、原料、発酵様式、酵母の違いなど、それぞれが独自に開発を行っているため製造工程がさまざまです。たとえば、通常は原料として大麦麦芽を用いますが、ヴァイツェンといわれる白ビールでは小麦麦芽が50%以上入っています。ヴァイツェンが他の地ビールに比べて、プリン体量が少ないのは、小麦が大麦に比べてプリン体量が少ないことに関係するかもしれません。
また発酵方法には、比較的高温(20℃前後)で発酵させる上面発酵、低温(5℃前後)で発酵させる下面発酵、1〜2年かけて熟成させる自然発酵などがあり、使用する酵母の種類もさまざまです。酵母の除去には、熱処理によって除去する場合と、熱処理を行わずにフィルター濾過を用いるもの(いわゆる生ビール)などがあります。ヴァイツェン以外の地ビールが、ビールと比べてプリン体量に差があるのは、製造の最終工程での酵母の除去が関係していると考えられます。地ビールでは、生きた酵母がビールに比べて多く含まれ、この酵母に由来するプリン体により含有量が高くなっていると推定されます。

プリン体カットの発泡酒であれば安心なのか?1,3,4,5)

プリン体がカットされた発泡酒3種類についてプリン体量を計測したところ0.0〜0.2mg/100mLとほとんどプリン体は含まれていませんでした(表)。しかし、プリン体がカットしてあるからたくさん飲んでも大丈夫というわけではありません。
プリン体をカットした発泡酒でも飲む量が増えれば、尿酸値が上昇します。
なぜなら尿酸を増やすのはプリン体だけではないからです。アルコールには、代謝されて尿酸を増やすだけではなく、尿酸を体外に排泄するのを抑える作用があります。また飲み過ぎると肥満を招いたり肝障害を引き起こしたりする原因となります。たとえプリン体カットのビールでも、飲み過ぎには注意しなければなりません。また最近人気のサウナで汗をかいたあと、食事の最初に飲むビールは美味しく感じられるかもしれませんが、空腹時にビールを飲むとアルコールの吸収は早くなります。またサウナによる大量の発汗で脱水状態になると、尿酸を体外に排泄しづらくなり、尿酸値が上昇する可能性もあります。食事をしながら、お水とお酒を交互にゆっくり飲むように心がけましょう。

参考文献
1)日高雄二 : 患者のための最新医学 痛風•高尿酸血症 改訂版 高橋書店 : 162-164, 178-180, 2020
2)日本痛風•尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編: 高尿酸血症•痛風の治療ガイドライン第3版 診断と治療社: 162-163, 2018
3)小片絵里ほか.:Gout and Nucleic Acid Metabolism 24(1):9-13, 2000
4)中田恵理子ほか.:高尿酸血症と痛風 27(2):85-91, 2019
5)中田恵理子ほか.:高尿酸血症と痛風 27(1):1-6, 2019

表 アルコール飲料のプリン体含有量 (高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版より)2)