富士薬品

(監修)国立病院機構 米子医療センター
病院長 久留一郎 先生

「高尿酸血症」って
何ですか?

尿酸値が7.0mg/dLを
超えると、高尿酸血症です。

高尿酸血症とは、尿酸値(血液中にある尿酸の濃度)が7.0mg/dLを超えた状態をさします。高尿酸血症が続くと、血液に溶けきらなくなった尿酸が結晶となって、体内にたまっていきます。それが手足の関節で起こり強い痛みを伴うのが痛風(痛風関節炎)です。さらに、尿酸が腎臓にたまると痛風腎を引き起こします。

高尿酸血症が引き起こす病気は、痛風だけではなく、さまざまな生活習慣病(高血圧、心疾患、メタボリックシンドロームなど)のリスクを高めるといわれています。そのため高尿酸血症は、いち早く、尿酸値を適正に保つことが大切です。 尿酸値が高いとなぜ悪いの?

日本痛風・尿酸核酸学会
ガイドライン改訂委員会 編 : 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 診断と治療社 : 72-74, 2018

針の形をした結晶(体の老廃物)

高尿酸血症は
どんな人に多いの?

高尿酸血症の患者さんは男性に多く、急増しています。

高尿酸血症の患者さんは、男性に多く、年齢とともに増加します。なお、女性の患者さんは少ないものの、年齢とともにやはり増加し、更年期をむかえ閉経すると高尿酸血症になりやすくなるので注意が必要です図1

痛風で通院中の人は、全国で125万人を超えており(2019年時点)、およそ25年間で約3倍に急増しています図2。痛風の原因となる高尿酸血症の患者さんはその約10倍と推定されていますので、1,000万人以上になります。他の生活習慣病の患者さんは、高血圧が4,000万人、糖尿病が予備軍と合わせて2,000万人、慢性腎臓病が1,300万人と推定されていますので、この数は極めて大きいことが分かります。

厚生労働省 e-ヘルスネット:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-068.html
日本生活習慣病予防協会サイト:http://www.seikatsusyukanbyo.com/statistics/
日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 診断と治療社:19,20,2018

なぜ高尿酸血症に
なるの?

尿酸を作る量と出す量の
バランスが崩れると
高尿酸血症になります。

健康な人の体内では、1日に約700mgの尿酸が作られ、同じ量が尿や便として排泄されており、常に1,200mgの尿酸が体内に蓄積されている状態です。これを「尿酸プール」といいます図3
尿酸値は、尿酸を作る量と出す量のバランスにより保たれています。しかし、作る量が増えたり、出す量が減ったりすると、そのバランスが崩れ、尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態になります。これが高尿酸血症です。

バランスが崩れる主な原因

高尿酸血症には、尿酸を作る量が多いタイプ(尿酸産生過剰型)、尿からの排泄が少ないタイプ(尿酸排泄低下型)、便からの排泄が少ないタイプ(腎外排泄低下型)、それらが混ざったタイプ(混合型)があります図4。尿酸産生過剰型と腎外排泄低下型を合わせて腎負荷型と呼びます。これらのタイプは病院での検査で簡単に知ることができます。また、それぞれのタイプに合ったお薬が開発されています。

尿酸値が高いと
なぜ悪いの?

高尿酸血症を放っておくと2つのリスクがあります。

尿酸値を高い状態のまま改善せずに放っておくと、次の2つのリスクが考えられます。

  1. 結晶となった尿酸によるリスク :痛風(痛風関節炎)、腎障害など
  2. 結晶となっていない尿酸によるリスク :慢性腎臓病(CKD)、
    さまざまな生活習慣病(メタボリックシンドローム、高血圧、心疾患など)

結晶となった尿酸によるリスク

痛風

痛風は、関節にたまった尿酸の結晶が剥がれ落ちることで起こり、「風が吹いただけでも痛い」と例えられるように、痛風発作は激痛を伴います。
なお、痛風の発作が起こりやすい時間帯や季節があります。


起こりやすい時間帯
夜中から明け方にかけて

この時間帯は1日の中で尿酸値が高いため、睡眠中は体温が下がり尿酸の結晶が生じやすいため、などの理由が考えられます。


起こりやすい季節
夏が多い

たくさん汗をかき脱水状態になることで尿酸値(血液中にある尿酸の濃度)が上がるためといわれています。

尿酸値が高いほど、また高い状態が長く続くほど痛風のリスクは高まります。尿酸値を6.0mg/dL以下にすると痛風の再発が少なくなることが報告されています。痛風発作やその再発を予防するためには、高尿酸血症の治療開始とともに、痛みがなくても尿酸値を6.0mg/dL以下に抑えることが大切です。

Choi, HK. et al.: Arthritis Rheumatol 67(2): 555, 2015
大山 博司 : 高尿酸血症と痛風 20(1) 17-18, 2012
Shoji, A. et al.:Arthritis Rheum 51(3) : 321, 2004

腎障害、尿路結石

尿酸は主に腎臓から排泄されるため、尿酸の結晶が腎臓にたまると炎症を起こし腎機能が低下します。尿路で尿酸が結晶になると尿路結石やカルシウム結石が生じ、尿管に結石がつまる尿管結石では激しい痛みを伴い血尿が出ることがあります。

結晶となっていない尿酸によるリスク

慢性腎臓病(CKD)

ゆっくりと腎臓の機能が弱っていく病気です。初期は自覚症状がありません。最近の研究では、尿酸が直接、腎臓に悪影響を与えていると考えられています。

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームは、内臓に大量の脂肪がたまり、糖尿病や脂質異常症、高血圧などを引き起こす症候群です。特に、内臓脂肪が多い人で尿酸値が高い場合には、高尿酸血症治療をすべきとされています。

日本肥満学会 編 : 肥満症診療ガイドライン2016 ライフサイエンス出版 : 84-85, 2016

高血圧と心疾患

高血圧と尿酸の関係性については研究中です。高血圧と高尿酸血症を合併すると心臓に酸素や血液を選ぶ冠動脈に動脈硬化などが起こり、狭心症や心筋梗塞が起こりやすくなるといわれています。

日本痛風・尿酸核酸学会 ガイドライン改訂委員会 編 : 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 診断と治療社 : 72, 74-88, 2018