Vol.3
牛乳と痛風
今回は、食事指導に関係する牛乳と痛風の関係についてみていきましょう。
痛風と食事指導
痛風発作予防の基本は生活習慣の見直しです。なかでも食事指導は大きなウエイトを占めています。尿酸値が上がる原因となるプリン体は食品から摂取されます。そのため、一般の方は痛風発作を予防するためには「プリン体さえ摂取しなければOK!」と考える方がいるかもしれません。もちろん、そのことも大切ですが、肥満の解消、アルコール摂取の制限、果糖制限、適度な水分摂取なども重要で、トータルでみていく必要があります。
しかしながら、尿酸の元となるプリン体は食べ物から摂取されるだけでなく、体内でも作られます。したがって、食事からのプリン体摂取に気をつけるだけでなく、体内で作られる尿酸を体外へ排泄することに気を配ることも大変重要です。高尿酸血症は、尿酸の産生が過剰な「尿酸産生過剰型」、尿酸の排泄が低下した「尿酸排泄低下型」、これらの両方が複合した「混合型」に分類されます(なお、腸管からの尿酸排泄の低下による高尿酸血症が、「腎外排泄低下型」として近年新たに追加されました)。
この3タイプのうち、もっとも多いのが「尿酸排泄低下型」で約60%を占め、「混合型」と合わせると約90%となります。つまり、多くの高尿酸血症患者の方は尿酸の排泄が低下しているといえます。
それでは、尿酸を排泄しやすくする食べ物や飲み物はあるのでしょうか?
乳製品は尿酸の排泄を促すという調査報告
米国での12年間にわたる前向きの疫学調査で、痛風の既往歴がない男性47,150人を対象にして、摂取した食品と痛風発作の発症の関係について調査しています1)。プリン体を多く含む肉類、魚介類などとプリン体が含まれない牛乳やヨーグルトなどの乳製品の摂取量を各5段階に分類して痛風発作発症リスクを検討しています。
その結果、肉類や魚介類では摂取量がもっとも多いグループは、もっとも少ないグループよりも痛風発作の発症のリスクが高いという結果が出ています。乳製品については、摂取量が増えるにつれて発症リスクが低下しています(乳製品の摂取量が最小のグループを1とした場合、摂取量が最大グループで痛風発作発症のリスクは0.56)。乳製品が痛風発作の発症を抑制するメカニズムとしては、乳製品に含まれるカゼインが胃腸で分解されアラニンに変わり、アラニンによる尿酸排泄促進作用により、血中の尿酸値を下げていると考えられています。
どのくらい牛乳を飲めばよい ?
それではどのくらい牛乳を飲めばよいのでしょうか。先に紹介した報告1)によると牛乳1日コップ1杯程度となっています。牛乳は飲みすぎると、乳脂肪の摂りすぎになることもありますし、肥満が気になる方は低脂肪牛乳や無脂肪牛乳でもよいようです。また、「牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる」という方にはヨーグルトがおすすめです。
ただし、尿酸値の改善のために、牛乳などの乳製品の積極的な摂取を行っていればよいという誤解を招かないよう、日頃の運動指導とともに食事指導において適切な乳製品を取り入れるアドバイスをするなどの、トータルでの生活習慣の改善によって尿酸値を下げるように指導することが大切なことといえるでしょう。