Vol.2
軽い運動で尿酸値改善
生活指導は運動療法と食事指導に大別されます。ここでは、運動と痛風についてみていきましょう。
無酸素運動は尿酸値を上げる
瞬発力が求められる短距離走や、ベンチプレスといった強度の高い筋トレなどの無酸素運動は尿酸値を急上昇させます。
一時的に呼吸を止めて力を入れた状態で短期間に集中して行う無酸素運動を行うと、エネルギーを大きく消費します。するとATP(アデノシン三リン酸)の分解などにより、大量の尿酸がつくられます。プリン体の構成成分であるATPは、運動や代謝などのエネルギー源としてさまざまな場面で利用されています。通常は分解されても再びもとのATPに戻ります。しかし、激しい運動などで、ATPが多くなると余分なATPは分解されてプリン体が生じ尿酸が作られることになります。
また、激しい運動を行うことで筋肉は消耗し乳酸が増加し、腎血流量の低下や尿酸の排泄機能が低下して尿酸値が上がります。
そのため、尿酸値の高い人は無酸素運動などの激しい運動は避けたほうがよく、尿酸を増やさない有酸素運動などの軽い運動が適しています1)。
適度な運動で尿酸値改善
運動は、有酸素運動・無酸素運動・ストレッチの大きく3つに分類できます。尿酸値の高い方にお勧めできるのは、有酸素運動・ストレッチです。
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』(第3版)によると有酸素運動が推奨されています。
運動強度の参考になる指標に、Brogスケールがあります(表)2)。一般的には表における「13.ややきつい〜11.楽である」が推奨されます。しかし、痛風の既往がある患者さんは、関節に負担がかかることにより痛風を誘発する危険性や、虚血性心疾患などの合併も懸念されます。そのため、「13.ややきつい〜11.楽である」よりもやや低い運動強度が望ましいと考えられます3)。
おすすめの運動
おすすめの運動は、体に負担のかかりすぎないように、無理のない範囲でできる有酸素運動です。
ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などが代表的な有酸素運動です。1回にかける時間は30〜60分間程度、またできれば週に3回程度は行うとよいでしょう。
まとまった時間がとれない方は少しずつでも運動する心がけを持ってもらうことが大切です。エレベーターは使わずになるべく階段を使ってみる、1駅分は歩いてみる、などできる範囲で、普段より歩く距離をのばしてみましょう。発汗による脱水予防のためにも運動の前後や、運動の最中には適度な水分補給も行いましょう。
<注意>
- 肥満気味の方や合併症のある方は、運動を制限しなければならない場合もあります。
- 運動して水分が失われた後に、サウナなどに入りさらに発汗すると脱水が進み尿酸値が上がります。
- 運動後の飲酒は避けましょう。汗をかき水分が失われるとアルコールの吸収が高まり尿酸値が上がります。